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April 15, 2005
開けゴマ!:エピソード1
それは、3月のある気持ちよく晴れた暖かな昼下がり、俺は新宿の京王百貨店の入り口を通り抜けた。1階には化粧品や、婦人物のバッグや靴が並んでいたが、そんなものに構ってはいられない。俺は8階のペットショップを目指して、足早にエレベーター乗り場へと向かった。
エレベーター乗り場の前に到着するや、俺は▲の形をした昇りボタンを連射した。エレベーターが到着して扉が左右に開くと、俺は滑り込むように中へ進んだ。とある老夫婦がこちらへ向かってくるのが見えたが、俺の人差し指は、すでに8階のボタンと「閉」ボタンを押した後だった。無情にも扉は閉まり、エレベーターはゆっくりと上昇を開始した。
何をそんなに、俺は急いでいたのか?
コニーの死から、そろそろ一ヶ月。俺は、新しい文鳥のヒナが欲しくて仕方がなかったのだ。加えて、文鳥のヒナは繁殖期の春と秋にしか店頭に入荷されないため、俺の気持ちは焦っていた。今年のヒナがすべて売り切れてしまったら、秋まで半年も待たなければならないからだ。
さて、エレベーターが目的の8階へ到着すると、俺はペットショップへ直行した。そして、店員の女性を捕まえるや、すぐさまこう尋ねた。
「すみません!白文鳥のヒナはいますか?」
俺の勢いに面食らったペットショップのお姉さんは答えた。
「い、今は、2羽しかいませんけれど・・・。」
間髪を入れずに、俺は言った。
「見せてください!」
お姉さんが見せてくれた小さなバードケージには、5〜6羽の桜文鳥と、2羽の白文鳥のヒナが一緒に入っていた。ヒナの白文鳥の羽は、後頭部から尻尾にかけてグレーの羽が生えている。このグレーの部分が少ないほど、綺麗な純白の成鳥に育つ。一羽のヒナはグレーの羽が少なく、そして、もう一羽の方はダルメシアンドッグのように、白とグレーのまだらの柄をしていた。
「こっちの白い方は、もう売却済みなんです。」
お姉さんは言った。
俺は仕方がないので、もう一羽のまだらのヒナをケージから出してもらい、手のひらに乗せた。
(うーん、サエない・・・。最後まで売れ残るだけに、なんだか貧相なヒナだ。)
「じゃあ、このヒナもらって行きます。」
しかし、気持ちとはまるで裏腹に、俺はそう答えた。今日は家を出たときから、白文鳥のヒナを連れて帰るつもりでいたんだ。
「あの、文鳥を飼ったことはありますか?」
ペットを吟味する様子もない客(俺)に、お姉さんは明らかに困惑していた。
「はい、20年!」と、俺は答えた。
さらに会話は続く。
お姉さん「まだ、3時間おきに給餌器(※)で餌をあげてるんですけど、出来ます?」
俺「出来ます、出来ます!(厳密にはやや無理があるが・・・。)」
※生まれてから約一ヶ月半の間、文鳥のヒナは自分で餌を食べることが出来ない。プラスチックのストローのような専用の器具で、熱湯でふやかした粟玉を飲み込ませてやる必要がある。
というわけで、お会計を済ませ、俺は足早にペットショップを後にした。お店のお姉さんは最後の最後まで、怪訝な表情を隠せずにいた。
さて、自宅に戻ると、俺はさっそく小さなボール紙の箱(小鳥を買うと包んでくれる)を開け、ヒナをそっと手のひらのうえに乗せた。
(白文鳥のヒナなんて、白くて可愛い順から売れていくんだろうな・・・。)
俺は、貧相なまだらのヒナを見つめて、ぼんやりと考えた。
(しかし、今日、俺がこいつを買わずに、ずっとお店に売れ残ったらどうなるんだ?やはり、何らかの形で「始末」されちゃうのか?)
そう思った瞬間、俺の心に怒濤のごとく愛情の波が押し寄せた。
そして、どうせなら、まだらの見てくれを肯定すべく、この鳥に「ゴマ」という名前を付けることにした。ゴマ塩の「ゴマ」だ。アクセントを「ゴ」に置き、強く発音する。
つづく・・・。

うちにやって来た当日のゴマちゃん近影。この写真はたまたま、実物以上に可愛らしく撮れてしまった。本当はもっと貧相で、痩せこけたヒナだった。

